あわよくば朝から入れる温泉に入ろうと思って、佐賀といえば武雄温泉に早朝から開いてる温泉を見つけ、武雄市内の道の駅で車中泊をしてた私。寒さで夜中三時に目が覚めたけど、シュラフとビビィを重ねて(車の床は冷たいけど、銀色の断熱性ある素材をかませたら大丈夫)ゆっくり休めたので、冷静になるとひとまず締め切り前の仕事が気になったので温泉ではなく佐賀の唐津へ向かった。7時からやってるコメダがあったから。今回初の全国チェーンの店。この日も集中して仕事するのにめっちゃぴったりで雑誌への寄稿原稿を1時間で書き上げる、朝の時間は金なり。歯磨きをし、すっきり。「やっぱり今日はちょっと寒いなぁ」って思いながら後輩に連絡をし、糸島にある彼女が営むお菓子屋さん「フルーレ」へ。糸島を訪れるのは10年以上ぶりだ。
後輩は由香ちゃんといって(当時は旧姓を呼び捨てで呼んでたけど)新卒で入った会社の1つ下の後輩で、私を彼女は姉のように慕ってくれて(ちょっと買いかぶりすぎなところもあると思うけど)いろんな苦しさや喜び、プライベートのことも共有した仲。明るくかわいく素直で、こんな美しい心の持ち主がいるのかと思うほど芯から人間力が高い、私の人生の中でもトップクラスの心がきれいな人。ご両親からやっぱり素晴らしくて、ママはがんで亡くなってしまったけど、お菓子作りがすごく得意で、お店まで持った。それが、フルーレ。特にスコーンとタルトがめっちゃおいしい。「ぜひ糸島に遊びにおいで」と、2010年かな?夏休みにこのお家を訪れてからは、ママは実の母のようにお野菜やお菓子を送ってくれ、パパとは東京で3人で一緒に学士会館でご飯を食べることもあった。本当に、いいと思ったら素直にやる、人を想う、そんな人たちだった。けど、ママが亡くなってから私は1度も行けてなくて、お葬式の時にも何もできず、ずっとずっと気になっていた。お家に行った時、がんと闘病するママが「石鎚神社って神様ご利益があるみたい」とふとこぼし、「ママ、うちの実家の近くよ!」と私がその後買って渡した石鎚神社のお守りを「藍ちゃんのお守り」といって、ずっと身近に持っててくれて、棺の中にも入れてくれたらしい。
今回は由香ちゃんや2人の息子たち、頼もしい旦那さんと、私の話を聞いてみたいといって来てくれたご友人とたくさん楽しく話し、最後にはお墓参りに行ってママにやっとお線香をあげることができた。由香ちゃんの計らいで、御祈祷の依頼主の名前を「母も喜ぶと思います」とわたしの名前にしてくれた。こういうとこなんよー(涙)。名前が呼ばれた瞬間、2人の息子とみんなで「よばれた!」っていう顔して、小声で「いぇーい来たよー!」って千手観音の前でアピールした。来れてよかった。
朝、由香ちゃんの顔を見た瞬間は、思いが爆発してわーっと泣いてしまった。「いっぱいしてもらったのに、今まで来れんかってごめんね」「会ってくれてありがとう」「パパもママも大好き」がないまぜになって。二人の息子たちに、「ねえねえ、なんで泣いとーと」って言われたんだけど、「やっと来れる自分になった」って思いもあって。ママが亡くなった当時の私はどん底に悩んでいて、大切な相手ほどどうすればいいのかわからなくなって何もできないまま。「前原(まえばる)」って住所の文字を今回標識で見ただけでも、この家族の楽しい記憶がフラッシュバックして、懺悔と感謝で涙が溢れた。彼女に会うことは、この旅最大の、クリーニングだったのだ。結局、話が盛り上がりすぎてほぼ丸一日前原で過ごすことになるのだが、昼すぎに一緒に「牧のうどん」で人生最高に柔らかい、やわふわーなうどんを食べれてよかったし、帰り際に「年末年始の休業で、これだけしかないけど」ってたくさんお菓子を持たせてくれたりするのは昔から変わらんし彼女たちらしいところだなと感じた。集まったメンズにも、どうやらYONも含めて面白がってもらえたようで、よかった。
インスタにリアクションするのも、電話や手紙も、贈り物をするのもいいことだけど、やはり会って目を見て言葉と一緒に心を交わすことがいちばんだなあ。
住みたいまちとして有名な糸島やけど、移住者が増えてどんどん田畑に新しい家が建って、海岸のほうはリゾート地のようになっているらしい。地元民の中には、「自分たちが好きなふるさとが、どんどん変わってしまう」そんな思いの方々もいるように感じた。
「自分が大切にされてない」そんなふうに感じるのは、パートナー間でも、家族でも、クラスでも、そしてまち単位でも同じ、かなしいし、関係性が危うくなってくる感情。そんなかなしさを感じさせないように「自分は〇〇にとって喜びの(価値のある・貢献できる)存在」とか思えるようにするのが、思いやりだったり配慮だったり時に企画だったりするのかな。自分だったらこうだから相手もきっとそう、よりも、感じ方考え方ごと相手になってみることも大事。コミュニケーションを仕事にしてもう20年ほどになるけど、改めて、コミュニケーションの力を信じたい。
ここが地元の由香ちゃんらも、新しい人たちも交わって、糸島のいいところ、個人的にはゆたかな農業かな…を残しながら、未来に続いていったらいいなぁって思う。
とりあえず、牧のうどんは不滅で。
私が糸島を好きなのは、この大好きな家族が住んでいるから。それがいちばんの理由です。